この機会《きかい》に乗じて自《みず》から利《り》し自家《じか》の懐《ふところ》を肥《こ》やさんと謀《はか》りたるものも少なからず。
 その事実を記《しる》さんに、外国公使中にて最初《さいしょ》日本人に親《した》しかりしは米公使タオンセント・ハリスにして、ハリスは真実|好意《こうい》を以て我国《わがくに》に対したりしも、後任《こうにん》のブライン氏は前任者に引換《ひきか》え甚《はなは》だ不親切《ふしんせつ》の人なりとて評判《ひょうばん》宜《よろ》しからず。小栗上野介《おぐりこうずけのすけ》が全盛《ぜんせい》の当時、常に政府に近《ちか》づきたるは仏国公使レオン・ロセツにして、小栗及び栗本鋤雲《くりもとじょうん》等とも親《した》しく交際《こうさい》し政府のために種々の策《さく》を建てたる中にも、ロセツが彼《か》の横須賀造船所《よこすかぞうせんじょ》設立の計画《けいかく》に関係《かんけい》したるがごとき、その謀計《ぼうけい》頗《すこぶ》る奇《き》なる者あり。
 当時外国公使はいずれも横浜に駐剳《ちゅうさつ》せしに、ロセツは各国人|環視《かんし》の中にては事を謀《はか》るに不便《ふべん》なるを認
前へ 次へ
全34ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
石河 幹明 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング