て通商条約《つうしょうじょうやく》を結び、次《つい》で英露仏等の諸国も来りて新条約の仲間入《なかまいり》したれども、その目的は他に非ず、日本との交際《こうさい》は恰《あたか》も当時の流行《りゅうこう》にして、ただその流行に連《つ》れて条約を結びたるのみ。
通商貿易《つうしょうぼうえき》の利益《りえき》など最初より期するところに非ざりしに、おいおい日本の様子《ようす》を見れば案外《あんがい》開《ひら》けたる国にして生糸《きいと》その他の物産《ぶっさん》に乏《とぼ》しからず、随《したがっ》て案外にも外国品を需用《じゅよう》するの力あるにぞ、外国人も貿易の一点に注意《ちゅうい》することと為《な》りたれども、彼等の見《み》るところはただこれ一個の貿易国《ぼうえきこく》として単にその利益《りえき》を利せんとしたるに過《す》ぎず。素《もと》より今日のごとき国交際《こくこうさい》の関係《かんけい》あるに非ざれば、大抵《たいてい》のことは出先《でさ》きの公使に一任し、本国政府においてはただ報告《ほうこく》を聞くに止《とど》まりたるその趣《おもむき》は、彼《か》の国々が従来|未開国《みかいこく》に対す
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