つと》めたる所以《ゆえん》に非ざるか、竊《ひそか》に測量《そくりょう》するところなれども、人々の所見《しょけん》は自《おのず》から異《こと》にして漫《みだり》に他より断定《だんてい》するを得ず。
 当人の心事《しんじ》如何《いかん》は知るに由《よし》なしとするも、左《さ》るにても惜《お》しむべきは勝氏の晩節《ばんせつ》なり。江戸の開城《かいじょう》その事|甚《はなは》だ奇《き》にして当局者の心事《しんじ》は解《かい》すべからずといえども、兎《と》に角《かく》その出来上《できあが》りたる結果《けっか》を見れば大成功《だいせいこう》と認めざるを得ず。およそ古今の革命《かくめい》には必ず非常の惨毒《さんどく》を流すの常にして、豊臣《とよとみ》氏の末路《まつろ》のごとき人をして酸鼻《さんび》に堪《た》えざらしむるものあり。然《しか》るに幕府の始末《しまつ》はこれに反し、穏《おだやか》に政府を解散《かいさん》して流血《りゅうけつ》の禍《わざわい》を避《さ》け、無辜《むこ》の人を殺さず、無用《むよう》の財《ざい》を散ぜず、一方には徳川家の祀《まつり》を存し、一方には維新政府の成立《せいりつ》を容易
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