もんだい》としてさり気《げ》なく申出《もうしいだ》したるは、たといこの事が行われざるも造船所|計画《けいかく》の進行《しんこう》に故障《こしょう》を及ぼさしむべからずとの用意《ようい》に外ならず。掛引《かけひき》の妙《みょう》を得たるものなれども、政府にてはかかる企《たくら》みと知るや知らずや、財政|窮迫《きゅうはく》の折柄《おりから》、この申出《もうしいで》に逢うて恰《あたか》も渡《わた》りに舟《ふね》の思《おもい》をなし、直《ただち》にこれを承諾《しょうだく》したるに、かかる事柄《ことがら》は固《もと》より行わるべきに非ず。その事の知《し》れ渡《わた》るや各国公使は異口同音《いくどうおん》に異議を申込みたるその中にも、和蘭公使《オランダこうし》のごときもっとも強硬《きょうこう》にして、現に瓜哇《ジャワ》には蘭王《らんおう》の料地《りょうち》ありて物産《ぶっさん》を出せども、これを政府の手にて売捌《うりさば》くことなし、外国と通商条約《つうしょうじょうやく》を取結びながら、或《あ》る産物《さんぶつ》を或る一国に専売《せんばい》するがごとき万国公法《ばんこくこうほう》に違反《いはん》し
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