たりした。おさわはヒーヒー泣いた。けれどものの三十分とも経たないうちにけろりとした顏に返つた。由藏はそれを見ると一層むしやくしやして、もう死ぬやうな目に逢はせた。おさわの身体には生傷が絶へなかつた。
 或る夜由藏はやつぱり嫉妬から、たうとう村の若者の腦天に、五針も縫はねばならぬほどの傷をつけた。村の若い衆は由藏の家へ押しかけて來て、由藏を警察へ引つ張つて行かうとした。由藏は柱へしがみついて動かなかつた。親爺は若い衆の前に泣いて頼んだ。
「警察へだけは引つ張つてつてくれんな、その代りこいつの身体を打つなり縛るなりしてお前さん達がぢかに懲らしめてやつて呉ろ」と言つた。
「なにこの野郎、賭博《ばくち》も打てば泥棒もした奴だ、こんな惡黨はこの村にや置けねえ」と若い衆はいきり立つた。親爺は地べたへべつたり坐つて皆に頼んだ。
 そこで若い衆は由藏を村端れの第六天の森の中に連れて行つた。そして草の上にうつ伏せにして、その尻を青竹でひつぱたいた。百だけ打つて勘辯してやらうといふのであつた。尻の肉が青竹にむしり取られた。由藏は鼻先を土の中へ突つ込んで獣のやうにうめいていた。若い衆も流石に極めただけの數を
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