いるんだもの、お話にならない」
「馬鹿だなあ」
「役者が、馬鹿なのよ」
「じゃあ、なんだって、そんな馬鹿なものになったんだい?」
「それぁ、仕方がないわ。それじゃ、あんたは、また何だって戦《いくさ》になんか行ったの?」
「おとなりのマメリューク・スルタンの国でパルチザン共がストライキを起こして暴れるので鎮めに行ったのさ」
「よけいなことじゃなくって?」
「そんなこと云うと叱られるよ。パルチザンは山賊も同然だから、もしあんまり増長してそのストライキが蔓延でもしようものなら、あの近所にはセシル・ロードだの山上権左衛門《やまがみごんざえもん》なんて世界中の金満家の会社や山などがあるし、飛んだ迷惑を受けないとも限らぬと云うので、征伐する必要があったんだ」
「金満家が迷惑すれば、あんた方まで戦に行かなければならないの?」
「知らないよ。大将か提督《ていとく》かに聞いておくれ」
オング君が、そう鰾膠《にべ》もなく云って、お菓子を喰べてコーヒーを飲むのを、娘は少しばかり慍《いきどお》ったような顔で眺めていましたが、やがて、ふと思いついたように、反りかえった鼻のさきに皺を寄せて薄笑いを浮かべました。
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