さや》等。
ここは其の處でないから其調理法や風味の事はあげつらはない。唯優秀と思はれる數種についてのみ、少しく説明する所があらう。
トトキ、ヤブカンザウ、ギバウシユ、ヨメナ、雪の下、オホバタネツケバナなどは雜草と云つても、昔から風流の意味で人が嗜《たしな》み、世間の評價も既に定まつてゐる。ヤブカンザウの新芽、オホバタネツケバナなどは栽培の野菜に劣らざる味を有してゐる。
ツユクサの新芽は今年始めて試みたが、大に推奬するに足りるものである。佳品としてはアカザの實のつくだ煮を擧げたい。紫蘇《しそ》の實、唐辛《たうがらし》の實を少し雜ぜて之を作ると、朝々の好菜となる。次にはタチツボスミレの天ぷらである。粘液質で、齒當りが甚だ好い。太いタンポポの根もいろいろと使ひ道の有るものである。
可食野菜の事は先づこれぐらゐにして置かう。相當に念を入れて食べ試みたから話すことはまだ澤山有るが、たいして詩的のものではなく、同好の人と談ずべく、世間に吹聽《ふいちやう》するまでの氣にならない。また吹聽するにはもつと十分の用意がいる。量と質とに於て、實際長期に亙る補助食物としての資格が有るか。榮養價は果して
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