晩餐
素木しづ
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)卓《テーブル》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)微笑みみ[#「み」余分か、それとも「見」か?]ながら
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)くり/\と肥ってる
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いつか暗くなった戸の外に、激しい雨風の音がする、嵐だ。
親子は、狭い部屋の壁際にぶらさがった、暗い電燈の下の卓《テーブル》に集まって、今夜食をしようとしてゐた。まだ本当に父も母も若かった。そして子供は漸く卓につかまって、立ってる事が出来る程の、くり/\と肥ってる女の子だった。
男も女も、その顔にはまだ少しの皺もよってなかった。しかし男の濃い眉毛の陰のくぼんだ優しさうな瞳には、だるさうな疲れの色が見えてゐた。そして女の濃い髪のいろや、細やかな肩のあたりには、なほ打沈んだやうな深い疲れと、まどろむやうな安らかさとが見えてゐた。
一日が終ったのであった。その日の悲しみも苦しみも、夜の安らかさに流れやうとしてゐるのだった。そして、彼等は黙って微笑しながら、その子供のすべてに瞳を
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