『さうね、私たちは働きませうね。』彼女は、おちついて安らかに云った。そして子供を膝の上に抱きながら、小さな乳首をだして乳をのませ初めた。
『さ、あとを片づけよう。そして寝よう、明日は早く起きようぢゃないか。』
 やがて、男は立ち上った。そしてテーブルを片づけ初めようとした時、もはや子供は乳房に頬をつけて眼を閉ぢてゐた。あたりは静まりかへった。
『嵐だな。』男は、立ちどまってさゝやいた。
[#地から2字上げ](『文章倶楽部』大6・2)



底本:「素木しづ作品集」札幌・北書房
   1970(昭和45)年6月15日発行
底本の親本:「文章倶楽部」
   1917(大正6)年2月号
入力:小林徹
校正:湯地光弘
1999年9月5日公開
2005年12月29日修正
青空文庫作成ファイル:
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