秋は淋しい
素木しづ

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)一|時《じ》心配した時子の病氣も

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)一|時《じ》心配した時子の病氣も

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、底本のページと行数)
(例)白いかび[#「かび」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)だん/\快《い》い方に
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 一|時《じ》心配した時子の病氣も、だん/\快《い》い方に向って来ると、朝子は毎日ぼんやりした顔をして子供のベッドの裾の方に腰をおろしてゐた。そして朝子の寝てゐる間は、白いカーテンの巻き上げてある窓の方を見てゐる。
 窓からは、毎日のやうに釣台で運ばれて来る病人が見えた。病人の顔は黄色くなった木の葉のやうにみんな力ない。けれども空はいつも晴れてゐた。
 窓のそばには、大きな桜の木が一本、庭一ぱいに枝をひろげてゐた。しかしその大きな桜の葉は、もはや黄ばみかけてゐた。そして、いつとなく一つ/\土の上に落ちてゐ
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