三十三の死
素木しづ子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)お葉《えふ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)泣く程|口惜《くや》しく
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)什※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《どんな》に
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いつまで生きてていつ死ぬか解らない程、不安な淋しいことはないと、お葉《えふ》は考へたのである。併し人間がこの世に生れ出た其瞬間に於いて、その一生が明らかな數字で表はされてあつたならば、決定された淋しさに、終りの近づく不安さに、一日も力ある希望に輝いた日を送ることが、むづかしいかもしれない。けれどもお葉の弱い心は定められない限りない生の淋しさに堪へられなくなつたのである。そして三十三に死なうと思つた時、それが丁度目ざす光明でもあるかのやうに、行方のない心のうちにある希望を求め得たかのやうに、限りない力とひそかな喜びに堪へられなかつたのである。
お葉は十八の年、不具になつ
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