珠
素木しづ
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)多緒子《たをこ》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)ある朝|巍《たかし》が幸子を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)おむつ[#「おむつ」に傍点]を
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)生き/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
丁度夏に向つてる、すべての新鮮な若葉とおなじやうに、多緒子《たをこ》の産んだ赤ん坊は生き/\と心よく康《すこ》やかに育つた。そしてそれと同時に産後思はしくなかつた彼女の肉體も恢復して來ると、ながい間産前から産後、そしていまもなほ引つゞいてゐる、いろ/\涙ぐましい堪へがたいなやみも、忙しい雜事の爲めにとりまぎれて、思ひつめる事も少なくなつた。
多緒子は産後思はしくなかつたけれども、彼女の若い肉體には、別に少しのやつれも見えなかつた。やはり艶のいゝ生き/\した頬をして、娘の時のやうにありあまるやうな黒髮を手輕な銀杏返しに結つて、白い兩腕を忙《せは》しく動かしながら、赤ん坊の着物を縫つたり
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