そして直ちにいまわしい重苦しい、だるい気分になって、どうしたわけか時々おそわれるように羞《はずか》しさが、少女の乱れたお下髪《さげ》の髪の先から、足の先までをぞっとさせた。そして夜具のなかの両足が、物におびえたようにふるえた。
『どうしたらいゝだろう。』
 けれども少女は、そのまゝ床のなかにいるという事も出来なかった。わずかに起き上っては見るけれども、いつものように着物をきるだけの元気はなかった。そして急に目覚めた歓喜も、すべて小さな幸福までも少女の心から消えてしまって、日を見ることの出来ない土のなかのもぐら[#「もぐら」に傍点]のように悲しかった。やさしい母にもなつかしい兄にも姉にも、自分は罪人のように逢うことが出来ないように思った。
『どうして逢おう。』少女は、この不意な、肉体上の今の変化が、なにか知られざる罪に対する罰のように思われてならなかった。けれども彼女はすぐに、『わたしは知らないのです。私はなんにも悪いことを致しません。』と心のなかに哀願した。少女は、まだ若い幼い心に、苦しみや悲しさは、悪という罪に対してのみ受ける罰でなければならないと思ってたのだ。そしていま、この烈しい
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