出た。
うす暗い部屋のなかに三人の女が、かたまるやうによりあつまってゐた。そしていまうす赤黒くほそく痩せた赤ん坊が、布団の上から抱き上げられやうとしていた。女だちの手があはてゝ布団をまくり上げてゐた。
『赤ちゃんが、おゝすっかり冷たくなってしまって、どうしませう。』
と若い近所の子持の奥さんが、あはてゝ赤坊を抱き上げた。赤坊は少しも泣かなかった。そして白いやうな眼をうっすりと細目にあけてゐた。赤坊は毛布にかたくつゝまれて、湯たんぽの湯がかへられたりした。そして赤坊は再び寝かされたが、若い子持の奥さんは心配そうに、その細くうっすらと開いた白い眼を見つめてゐた。
『旦那、大変ですね。』と柱にぶらさがるやうにした女があった。
『私しゃ驚いてるんですよ。旦那、赤ん坊はどうでもいゝとして、奥様がですよ。赤ん坊は明るいうちに出てしまって、そしてまだ後のもの[#「後のもの」に傍点]が降りないって云ふじゃありませんか。このまゝでゐるともう奥様は死んじゃいますよ。旦那どうかなさいましよ。だから私しゃあの産婆さんはいけないって云ふんだ。』
『あゝ髪結さんかい。ありがたう。』
彼はあはてゝまた産室に戻っ
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