自然に!
――やがて子供は見たのであつた、
礫《こいし》のやうにそれが地上に落ちるのを。
そこに小鳥はらく/\と仰けにね転んだ。
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夜の葦
いちばん早い星が 空にかがやき出す刹那は どんなふうだらう
それを 誰れが どこで 見てゐたのだらう
とほい湿地のはうから 闇のなかをとほつて 葦の葉ずれの音がきこえてくる
そして いまわたしが仰見るのは揺れさだまつた星の宿りだ
最初の星がかがやき出す刹那を 見守つてゐたひとは
いつのまにか地を覆うた 六月の夜の闇の余りの深さに 驚いて
あたりを透かし 見まはしたことだらう
そして あの真暗な湿地の葦は その時 きつとその人の耳へと
とほく鳴りはじめたのだ
[#改ページ]
燈台の光を見つつ
くらい海の上に 燈台の緑のひかりの
何といふやさしさ
明滅しつつ 廻転しつつ
おれの夜を
ひと夜 彷徨《さまよ》ふ
さうしておまへは
おれの夜に
いろんな いろんな 意味をあたへる
嘆きや ねがひや の
いひ知れぬ――
あゝ 嘆きや ねがひや 何といふやさしさ
なにもないのに
おれの夜を
ひと夜
燈台の緑のひかりが 彷徨《
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