を、その儘には受領し
ない。いかにも私の丈に合ふやうに、却つて、
それで瀟洒に見える様、それを裁ち直すのだ。
あゝ! かうして私は静かなクセニエを書
かねばならぬ!
[#改ページ]
咏唱
この蒼空のための日は
静かな平野へ私を迎へる
寛やかな日は
またと来ないだらう
そして蒼空は
明日も明けるだらう
[#改ページ]
四月の風
私は窓のところに坐つて
外《そと》に四月の風の吹いてゐるのを見る
私は思ひ出す いろんな地方の町々で
私が識《し》つた多くの孤児の中学生のことを
真実彼らは孤児ではないのだつたが
孤児!と自身に故意《わざ》と信じこんで
この上なく自由にされた気になつて
おもひ切り巫山戯《ふざ》け 悪徳をし
ひねくれた誹謗と歓び!
また急に悲しくなり
おもひつきの善行でうつとりした
四月の風は吹いてゐる ちやうどそれ等の
昔の中学生の調子で
それは大きな恵《めぐみ》で気づかずに
自分の途中に安心し
到る処の道の上で悪戯をしてゐる
帯ほどな輝く瀬になつて
逆に後《うしろ》に残して来た冬の方に
一散に走る部分は
老いすぎた私をからかふ
曾て私を締めつけた
多くの家族の
前へ
次へ
全17ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
伊東 静雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング