[#「片+總のつくり」、第3水準1−87−68]《まど》の桁《けた》には瓶を並べ、纏絡《てんらく》植物それより生え出でる。舞台の右方はこの壁にて仕切られるなり。
晩夏の午時《ひるどき》。石欄より登り来る階段の上にはデジデリオ、アントオニオ、バチスタ、パリスの四人|茵絨毯《しとね》の上に寝そべりている。
皆沈黙。風静かに扉の帷幔を動かす。しばらくあってチチアネルロ、ジヤニイノ二人右手の戸口より入り来る。デジデリオ、アントオニオ、バチスタ及びパリス、気づかわしげに、また物聞きたげに、二人の方に進み寄り話しかける。少時の間の後に――。
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パリス いけない?
ジヤニイノ (声を詰らせて)だいぶいけない。(涙にかきくれたるチチアネルロに)君、気の毒だな。ピッポオ。
バチスタ 眠っておいでか?
ジヤニイノ いや、起きておいでだ。しきりと空想していらっしゃる。画架を持って来いとおっしゃった。
アントオニオ だが、それを差上げるわけには行くまい。ねえ、いけないんだろう。
ジヤニイノ 医者はいいと言った。もう何もいやな思《おもい》をお
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