の苦しかりとも
あるがまゝ醜きがまゝに人生を愛せむと思ふ他《ほか》に途《みち》なし
ありのまゝこの人生を愛し行かむこの心よしと頷きにけり
我は知るゲエテ・プラトン惡《あ》しき世に美しき生命《いのち》生きにけらずや
吃《きつ》として霜柱踏みて思ふこと電光影裡《でんくわうえいり》如何に生きむぞ
石とならまほしき夜の歌 八首
石となれ石は怖れも苦しみも憤《いか》りもなけむはや石となれ
我はもや石とならむず石となりて冷たき海を沈み行かばや
氷雨降り狐火燃えむ冬の夜にわれ石となる黒き小石に
眼《め》瞑《と》づれば氷の上を風が吹く我は石となりて轉《まろ》びて行くを
腐れたる魚《うを》のまなこ[#「まなこ」に傍点]は光なし石となる日を待ちて我がゐる
たまきはるいのち寂しく見つめけり冷たき星の上にわれはゐる
あな暗《くら》や冷たき風がゆるく吹く我は墮ち行くも隕石のごと
なめくぢ[#「なめくぢ」に傍点]か蛭のたぐひかぬばたまの夜の闇處《くらど》にうごめき哂《わら》ふ
また同じき夜によめる歌 二首
ひたぶるに凝視《みつ》めてあれば卒然《そつぜん》として距離の觀念|失《な》くなりにけり
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