っと二十四頁。それも全部に亘って、もう一度書直しを要するのだ。(スコットの恐るべき速さを考えると厭《いや》になる。)第一、これは作品としても下《くだ》らぬものだ。昔は、前日書いた分を読返して見るのが楽しかったのに。
マターファ側の代表者が政府と交渉の為、毎日マリエからアピアヘ通《かよ》っていると聞いて、彼等をうち[#「うち」に傍点]へ引取って、此処から通わせることにした。毎日往復十四|哩《マイル》では大変だから。但し、この事によって、私は今や公然と叛乱者側の一員と認められるようになった。私への書簡は一々チーフ・ジャスティスの検閲を受けねばならぬ。
夜、ルナンの「基督《キリスト》教の起原」を読む。素晴らしく面白い。
五月××日
郵船日だというのに、やっと十五頁分(「退潮《エッブ・タイド》」)しか送れない。もう此の仕事は厭になった。スティヴンスン家の歴史でも又続けようか? それとも、「ウィア・オヴ・ハーミストン」? 「退潮《エッブ・タイド》」には全く不満だ。文章に就いて云っても、言葉のヴェイルがあり過ぎる。もっと裸の筆が欲しい。
収税吏に新宅の税を督促さる。郵便局へ行き、「島の
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