ていた。彼の顔は、初めの挨拶の時は極めて他処《よそ》行きであったが、進んで、ツシタラが彼等の獄中での唯一の友であったことを語る段になると、急に、燃える様な純粋な感情を露《あらわ》したかに思われた。自惚《うぬぼれ》ではないつもりだ。ポリネシア人の仮面――全く之は白人には竟《つい》に解けない太平洋の謎だが――が斯くも完全に脱棄てられたのを、私は見たことがない。

九月×日
 快晴。朝早く彼等[#「彼等」に傍点]が来た。逞《たくま》しい、顔立も尋常な青年ばかりが揃っている。彼等は直ちに我が新道路の工事に着手した。老ポエは頗《すこぶ》る上機嫌。この計画で若返ったように見える。頻《しき》りに冗談を言い、ヴァイリマの家族の友なることを青年等に誇示するかの如く、方々歩き廻っている。
 彼等の衝動が、道路完成迄永続きするか、どうか、それは私にとって毫《ごう》も問題でない。彼等がそれを企てたということ。そして、サモアでは未だ曾《かつ》て聞いたこともない様な事を進んで実行し始めたこと。――之だけで充分だ。試みに思え。之は道路工事――サモア人の最も忌み嫌うもの。此の土地では、税の取立に次いで叛乱の原因となる
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