ている姿は。
一《ひと》月ほど前、彼が翠雲《すいうん》山中で大いに牛魔《ぎゅうま》大王と戦ったときの姿は、いまだにはっきり[#「はっきり」に傍点]眼底に残っている。感嘆のあまり、俺《おれ》はそのときの戦闘経過を詳しく記録に取っておいたくらいだ。
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……牛魔王一匹の香※[#「けものへん+章」、第3水準1−87−80]《こうしょう》と変じ悠然《ゆうぜん》として草を喰《くら》いいたり。悟空《ごくう》これを悟り虎《とら》に変じ駈《か》け来たりて香※[#「けものへん+章」、第3水準1−87−80]を喰わんとす。牛魔王急に大豹《だいひょう》と化して虎を撃たんと飛びかかる。悟空これを見て※[#「けものへん+俊のつくり」、第3水準1−87−75]猊《からしし》となり大豹目がけて襲いかかれば、牛魔王、さらばと黄獅《きじし》に変じ霹靂《へきれき》のごとくに哮《ほえたけ》って※[#「けものへん+俊のつくり」、第3水準1−87−75]猊《からしし》を引裂かんとす。悟空このとき地上に転倒すと見えしが、ついに一匹の大象となる。鼻は長蛇《ちょうだ》のごとく牙《きば》は筍《たかんな》に似たり
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