むににょらい》がそこを通りかかり、悟空の前に立ち塞《ふさ》がって闘いを停《と》めたもうた。悟空が怫然《ふつぜん》として喰《く》ってかかる。如来が笑いながら言う。「たいそう威張《いば》っているようだが、いったい、お前はいかなる道を修《ず》しえたというのか?」悟空|曰《いわ》く「東勝神州|傲来国《ごうらいこく》華果山《かかざん》に石卵より生まれたるこの俺《おれ》の力を知らぬとは、さてさて愚かなやつ。俺はすでに不老長生《ふろうちょうせい》の法を修《ず》し畢《おわ》り、雲に乗り風に御《ぎょ》し一瞬に十万八千里を行く者だ。」如来|曰《いわ》く、「大きなことを言うものではない。十万八千里はおろかわが掌《てのひら》に上って、さて、その外へ飛出すことすらできまいに。」「何を!」と腹を立てた悟空《ごくう》は、いきなり如来《にょらい》の掌《てのひら》の上に跳《おど》り上がった。「俺《おれ》は通力《つうりき》によって八十万里を飛行《ひぎょう》するのに、※[#「にんべん+爾」、第3水準1−14−45]《なんじ》の掌の外に飛出せまいとは何事だ!」言いも終わらず※[#「角+力」、第3水準1−91−90]斗雲《きん
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