な形にしたからとて、造物主をわし[#「わし」に傍点]が怨んどるとでも思っていなさるのじゃろう。どうしてどうして。逆に造物主を讃《ほ》めとるくらいですわい、このような珍しい形にしてくれたと思うてな。これからも、どんなおもしろい恰好《かっこう》になるやら、思えば楽しみのようでもある。わし[#「わし」に傍点]の左|臂《ひじ》が鶏になったら、時を告げさせようし、右臂が弾《はじ》き弓になったら、それで※[#「号+鳥」、第3水準1−94−57]《ふくろう》でもとって炙《あぶ》り肉をこしらえようし、わし[#「わし」に傍点]の尻《しり》が車輪になり、魂が馬にでもなれば、こりゃこのうえなしの乗物で、重宝《ちょうほう》じゃろう。どうじゃ。驚いたかな。わし[#「わし」に傍点]の名はな、子輿《しよ》というてな、子祀《しし》、子犁《しれい》、子来《しらい》という三人の莫逆《ばくぎゃく》の友がありますじゃ。みんな女※[#「人べん+禹」、142−16]《じょう》氏の弟子での、ものの形を超えて不生不死《ふしょうふし》の境《きょう》に入ったれば、水にも濡《ぬ》れず火にも焼《や》けず、寝て夢見ず、覚めて憂《うれ》いなきも
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