恐らく年齡も)恐ろしく不揃ひで、先頭には大變大きいのがゐるが、後の方はひどく小さい。夏島あたりと違つて餘り整つたなりをしてゐる者は無い。みんな、シャツを着てゐるとはいふものの、破れてゐる部分の方が繋がつてゐる部分より多さうなので、男の子も女の子も眞黒な肌が到る所から覗いてゐる。足は勿論全部|跣足《はだし》。學校から給與されるのか、感心に鞄だけは掛けてゐるやうだ。てんでに、椰子の果《み》の外皮を剥《む》いたものを腰にさげてゐるのは、飮料なのである。其等のおんぼろ[#「おんぼろ」に傍点]をぶら下げた連中が、それ/″\足を思ひ切り高く上げ手を大きく振りつつ、あらん限りの聲を張上げて(校長官舍の庭にさし掛かると、又一段と聲が大きくなつたやうだ)朝の椰子影の長く曳いた運動場へと行進して行くのは、中々に微笑《ほほゑ》ましい眺めであつた。
 其の朝は、他に二組同じやうな行進が挨拶に來た。

 夏島で見た各離島の踊の中では、ローソップ島の竹踊《クーサーサ》が最も目覺ましかつた。三十人ばかりの男が、互ひに向ひあつた二列の環を作り、各人兩手に一本づつ三尺足らずの竹の棒を持つて、之を打合はせつつ踊るのである
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