叔圉《こうしゆくぎよ》が死に、其の未亡人で※[#「萠+りっとう」、第3水準1−91−14]※[#「耳+貴」、第4水準2−85−14]《くわいぐわい》の姉に當る伯姫《はくき》が、息子の※[#「りっしんべん+里」、第3水準1−84−49]《くわい》を虚器に擁して權勢を揮ひ始めてから、漸く衞の都の生氣は亡命太子にとつて好轉して來た。伯姫の情夫・渾良夫《こんりやうふ》といふ者が使となつて屡※[#二の字点、1−2−22]都と戚との間を往復した。太子は、志を得た曉には汝を大夫に取立て死罪に抵《あた》る咎あるも三度迄は許さうと良夫に約束し、之を手先としてぬかり無く策謀を運《めぐ》らす。
 周の敬王の四十年、閏《うるふ》十二月某日|※[#「萠+りっとう」、第3水準1−91−14]※[#「耳+貴」、第4水準2−85−14]《くわいぐわい》は良夫に迎へられて長驅都に入つた。薄暮女裝して孔氏の邸に潛入、姉の伯姫や揮良夫と共に、孔家の當主衞の上卿たる・甥の孔※[#「りっしんべん+里」、第3水準1−84−49]《こうくわい》(伯姫からいへば息子)を脅し、之を一味に入れてクウ・デ・タアを斷行した。子・衞侯は即刻出
前へ 次へ
全19ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中島 敦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング