《くりいだ》すカメレオンの舌の肉色瞬間に見つ
長く圓き肉色の舌ひらめくやカメレオンの口はた[#「はた」に傍点]と閉ぢけり
カメレオンが木に縋《(すが)》りゐる細き尾のくる/\と卷く卷きのおもしろ
カメレオンの胴の薄さや肋骨も翠《みどり》なす腹に浮きいでて見ゆ
鵜《(う)》の歌
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豆州稻取海岸にて
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山直ちに海に崩れ入る岩の上に飛沫浴びつゝ鵜は立ちてゐる
我が投げし石はとどかず崖下の氷雨《ひさめ》しぶかふ荒磯の鵜に
たちまちに海黒み來ぬ巖《いは》の上の鵜の聲風に吹消されつゝ
雨まじり吹く風強み岩の鵜は翼《つばさ》收めてこらへてをるも
鸚鵡《(おうむ)》の歌
まどろみゐてふと眼をあけし赤羅《あから》鸚鵡我を見いでて意外気《おもはずげ》なり
緋衣《ひごろも》の大嘴《おほはし》鸚鵡我を見てまた懶《もの》うげに眼をとぢにけり
娼婦《たはれめ》の衣裳《きぬ》を纒へる哲学者鸚鵡眼をとぢもの思ひをる
いにしへの達磨大師に似たりけり緋衣曳きてものを思へば
眼をとぢて日にぬくもれる緋鸚鵡の頬の毛|脱《ぬ》けていた/\しげなり
緋に燃ゆる胸毛
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