に嘴《くち》を挿入れて鸚鵡うつ/\眠りてゐるも
麻の實をついばむ鸚鵡かたへなる我を無視してひた食《は》みに食《は》む
嘴《はし》と嘴|疾《と》く動きつゝまつ[#「つ」に「ツ」の注記]黒の鸚鵡の舌はまるまりて見ゆ
麻の實の殼を猛烈に彈《はじ》き飛ばす赤羅裳《あからも》鸚鵡ひたむきなるを
年老いし大赤鸚鵡|翼《はね》さきの瑠璃色なるが伊達者めきたり

   小蝦《(こえび)》の歌

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――土肥海岸所見――
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潮ひきし岩のくぼみの水溜り許多《ここだ》小蝦の影ひそみゐる
飴色に陽《ひ》に透きとほる小蝦らの何か驚きにはかに乱る
幾多《ここだく》の小蝦隱れし砂煙やがて靜まり水澄みにけり
砂煙の砂の一粒一粒が音なく沈み蝦隱れけり

   黒鯛の歌

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――土肥釣堀にて――
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巖陰《いはかげ》はさ青に透り黒鯛の尾鰭白々と妖《あや》しく翻《かへ》る
洞窟に光は入らず黒き水の湧くが如くに黒鯛|群《む》るる

   仔山羊の歌

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熱《あた》川の浜に一匹の仔山羊あり
海に向ひてしきりに啼く
その
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