駱駝は口に泡ためて首差しのべぬ柵の上より
孔雀の歌
よく見れば孔雀の眼《まなこ》切れ上り猛鳥《まうてう》の相《さう》あり/\と見ゆ
印度《(インド)》なる葉廣《はびろ》菩提樹の蔭にしてひろげ誇らむこの孔雀《とり》の羽尾《はね》
いと憎き矜恃《ほこり》なりけり孔雀はも餌を拾ふにも尾をいたはりつ
六宮《リクキウ》の粉黛《ふんたい》も色を失はむ孔雀一たび羽尾《はね》ひろげなば
縞馬
縞馬の縞鮮かにラグビイのユニフォームなど思ほゆるかも
ペリカンの歌
ペリカンは水の浅處《あさど》に凝然と置物のごと立ちてゐるかも
浴《ゆあみ》して櫛梳《くしけづ》りけむペリカンの濡れたる翼《はね》の桃色細毛《ももいろほそげ》
舶來の石鹸の香《か》も匂ひなむうす桃色のペリカンの羽毛《はね》
ペリカンの圓《つぶ》ら赤目を我見るにつひに動かず義眼《いれめ》の如し
長嘴《ながはし》の下の[#「下の」に「黄なる」の注記]弛《たる》みも凋《しぼ》みたりふくらむものと我は待ちしに
禿鷲
プロメトイス苛《さいな》みにけむ禿鷲も今日は寒げに肩を張りゐる
アンデスの巖根《いはね》嶮《こゞ》しき
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