マント狒の尻の赤さに乙女子は見ぬふり[#「ふり」に傍点]をして去《い》ににけるかも
白熊
仰《あふ》向けに手足ひろげて白熊の浮かぶを見ればのどかなりけり
白熊の白きを見ればアムンゼン往《ゆ》きて還《かへ》らぬむかし思ほゆ
眠り獅子の歌
何時《いつ》見ても眠るよりほかにすべもなきライオンの身を憐れみにけり
埒《らち》もなき状《ざま》にあらずや百獸の王の日向に眠れる見れば
うと/\と眠れる獅子の足裏《あなうら》に觸れて見たしとふと思ひけり
海越えてエチオピアより來しといふこのライオンも眠りたりけり
うつゝなき夫《せ》の鼻先に尻を向けこれも眠れり牝《めす》のライオン
汝《な》が國の皇帝《みかど》もすでに蒙塵《もうぢん》と知らでやもは[#「もは」に「(專)」の注記]ら獅子眠りゐる
仔獅子
獅子の仔も犬の仔のごと母親にふざけかゝるところがされけり
肉も未《ま》だ締らぬ仔獅子首かしげ相手ほしげに我が顏を見る
親獅子は眠りたりけり春の陽《ひ》に屈託げなる仔獅子の顏や
駱駝《(らくだ)》
生きものの負はでかなはぬ苦惱《くるしみ》の象徴かもよ駱駝の瘤は
やさし目の
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