の臀《ゐしき》のあなむくむくし
臀《ゐさらひ》のたゞ中にして三角の尻尾かはゆし油揚のごと
これやこのナイルの河のならはしか我に尻向け河馬は糞《まり》する
事終り小さき尻尾がパシヤ/\と尻を叩きぬ動きこまかに
丘のごと盛《もり》上る尻をかつ/″\も支へて立てる足の短かさ
三角の尻尾の先端《さき》ゆ濁る水のまだ滴《したゝ》りて河馬は動かず
狸
春晝《しゆんちう》の靜けきまゝに暫《しまら》くは狸の面《つら》の澁きを嘉《よみ》す
藁《わら》の上《へ》に驚き顏の狸はもショペンハウエルに似たりけらずや
瞞《(だま)》すなど誰《たれ》がいひけむ瞞されて身を嘆きなむ狸の面《つら》ぞ
黒豹
ぬばたまの黒豹の毛もつや/\と春陽《はるび》しみみに照りてゐにけり
思ひかね徘徊《たもとほ》るらむぬば玉の黒豹いまだ独り身《み》ならし
マント狒《ひゝ》
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マント狒は身長三尺余、毛は長くして白色。純白のマントをまとへ
るが如し。但し面部と臀部のみ鮮かなる紅色(桃色に近し)を呈す。
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銀白の毛はゆたかなれどマント狒《ひゝ》尻の赤禿包むすべなし
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