?)で死んだので、殘つた方も人にやつて了つた。次は、翼が藍で胸の眞紅な大きな鸚鵡。之はかなり立派で、止り木にとまつたまゝうつら/\とうたた寢[#「うたた寢」に傍点]するところなど、仲々に澁いものがあり、娼婦の衣裳を纏うた哲學者だ、などと喜んでゐたのだが、到頭餌のやり忘れで死なせて了つた。最後がカメレオンで、これは五日間しかゐないで、動物園へ行つて了つた。寂しいといふ程ではないが、餘り愉しい氣持ではない。

 授業の無い日だが、Y君に昨日の樣子を聞くために學校へ行く。Y君の話によると、動物園でも大變喜んで受けて呉れた由。「大變大きいカメレオンですね。うち[#「うち」に傍点]に今ゐる奴は殆どこの半分位しかありませんよ」と言つてゐたさうだ。なほ、死んだ場合には剥製用として學校の方へ送つて貰ふ約束にして來たといふ。Y君に禮を云つて、歸らうとすると、「夕方から南京町でK君のために祝ひの會をすることになつてゐるから、出て呉れませんか」と言はれた。出席する旨返事して學校を出る。
 K君は二週間程前、英語の高等教員檢定試驗に合格したのである。この間カメレオンを貰つた日に、K君の受持の生徒が二三人、おせ
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