る美しい樫の老木から、とつぜん炎が噴き出るのが見えたが、眼のくらむようなその光が消えるか消えないうちに、樫の木がなくなっており、枯れた切り株が残っているだけであった。翌朝そこへ行ってみると、その木がへんなぐあいに打ち砕かれていた。それは、衝撃で裂けたというよりは、まるい木製の細いリボンのようなものになってしまっていた。私はこれほど完全に破壊されたものを見たことがない。
この時まで私は、すでに明らかになっていた電気の法則を知らなかった。このときたまたま、自然哲学を大いに研究した人がいっしょに居たが、この災害に刺戟されて、電気や流電気の問題について、自分でつくりあげた理論を説明してくれたが、それは私には、新しくて、しかもびっくりするようなことであった。この人が言ったことで、コルネリウス・アグリッパ、アルベルツス・マグヌス、パラケルススなど、私の想像の君主たちは、ずっと蔭のほうに投げこまれ、こうして何かの宿命によって、こういう人たちがうっちゃられてしまったため、私は、例の研究を続けることに気乗りがしなくなった。私には、何ものもつねに知られない、知られそうもないようにおもわれた。長いあいだ私
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