ほど光栄なことであろう!
しかも、これだけが私の夢想ではなかった。幽霊とか悪魔を呼び出すことは、私の大好きな著者たちがみな文句なしに約束していたことであったので、その約束の履行されることをそれこそ熱心に望み、私の呪法がいつもうまくいかないと、その失敗を、師匠たちの未熟や不忠実のせいでなく、かえって自分の無経験と過誤のせいだと考えた。こうして、しばらくは、陳腐になった体系に熱中し、燃えるような想像力と子どもっぽい推理にみちびかれて、無数の対立しあった理論を素人のようにこねあわせ、種々雑多な知識のそれこそ泥沼のなかで絶望的にのたうちまわったが、これは、たまたまある事件がおこって私の観念の流れが変えられるまでつづいた。
私が十五歳くらいのとき、一家はベルリーヴ附近の家へ引っ込んだが、そのころ私たちは、すこぶる猛烈な怖ろしい雷雨に出会ったことがあった。それがジュラ山脈のむこうから進んできたかとおもうと、空のあちらこちらで一時にものすごい雷鳴がした。雷雨がつづいているあいだ、私は、好奇心と歓びに駆られて、それが進んでいくのを見守った。戸口に立っていると、私たちの家から十間あまり離れて立ってい
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