はじめたりした。私たちをあいてに劇をやったり、仮装舞踏会に[#「舞踏会に」は底本では「舞路会に」]出たりしたがったが、そのときの人物は、ロンスヴァルやアーサー王の円卓の英雄たちや、キリストの墓所を異教徒の手から取り戻すために血を流した一団の騎士から取ったものであった。
 子どものころを私よりも幸福に過ごすことのできた人間は、どこにもない。私の両親は親切と寛大の精神に満ちていた。私たちは、両親は自分たちの気まぐれに従って私たちの運命を左右する暴君ではなくて、私たちの享楽するいろいろな歓びをみな拵えてくれる人たちだと感じていた。他の家族と交わったとき、自分の身の上がどんなに特別に幸運だったかを、私は、はっきりと見きわめ、そのために親に対する愛情をますます深めるのだった。
 私の気性もときには荒々しくなり、私の熱情も激しくなったが、それは、私の性分のなかのある本能的傾向によって子どもっぽい追求にならず、むやみやたらにあらゆることを学びたいというのではなかったが、とにかく学びたいという熱心な望みに変っていった。ここで白状するが、私は、各国語の構造にも、各国の政府の法典にも、またいろいろな国家の
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