で、僕の計画のことでたびたび尋ねてくれましたので、僕も包み隠さずに話しました。すると、僕が最後には成功するようにと、何から何まで相談あいてになり、そのために僕の取ってきた手段の、ごくこまかなところまで熱心に気を配ってくれました。僕は、こうして示してくれた同情にわけもなくほだされて、心の底をうちあけ、魂の燃えるような熱情を言い表わし、この計画を促進させるためなら、自分の運命、自分の存在、自分のあらゆる希望をそれこそ喜んで犠牲にするだろうと、あらゆる熱情をこめて申しました。ひとりの人間の生死などは、僕の目ざした知識を得るためにはらわれるほどの値うちがありません。この人類の原素的な敵を領地として手に入れ、それを後世に伝えたいのです。僕がそう語っていると、あいての顔には暗い蔭かひろがり、はじめは自分の感情を抑えようとしていたらしく、両手で眼を覆っていましたが、その指のあいだから涙がぽたぽた滴り落ち、激した胸から呻き声が洩れてきたのを見て、僕の声も慄えてきて、先が続けられなくなりました。僕は話をやめました。やっとのことでその人は、めちゃくちゃな語調で言いはじめました。
「おかわいそうに! あなた
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