まで私のように気ちがいじみているのですか。あなたまで気が変になる酒をおやりになったのですか。どうぞお聞きください。私の身の上ばなしをしましょう。そしたらあなたは、口につけたその盃を、投げ棄てておしまいになるでしょうから!」
あなたにも想像がつくでしようが、このことばは、僕の好奇心を強く刺戟しました。しかし、衰弱しきったその人は、こういう悲しみの発作に、今にも前にのめりそうになったので、ふたたび平静に返るためには、何時間も休息して静かな会話を交すことか必要でした。
その人は、自分の感情の激するのをじっとこらえ、自分が情熱の奴隷であったことをみずから軽蔑しているようすで、まっくらな絶望に心か閉されそうになるのをがまんしながら、僕の身の上に関することをまた話させようとするのてした。そして、僕のずっと子どものころの話を訊きました。僕は急いでその話をしましたが、それからいろいろな憶い出ばなしが尾を引いて出てきました。僕は、友人を見つけたいという願望――いつも授かっていたようなものよりももっと親しみのある、僚友精神をもった同感に対する僕の渇望――のことを話して、こういうしあわせを与り知らない人
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