スチーヌが無罪になるわけでもなかろう。
ジュスチーヌの様子はおちついていた。喪服を着ていて、いつも人好きのする顔がその厳かな感情のためになんともいえぬ美しさを湛えていた。無数の人の視線と呪咀を浴びてはいても、無罪を確信しているように見え、慄えたりしなかった。こんなことがなければその美しさのために集まったあらゆる親切さも、ああいう大罪を犯したと考えられているので、その想像のために傍聴者の心から抹殺されてしまったのだ。これに対して、ジュスチーヌは平静だったが、それは明らかに無理に支えている平静さだった。前に取り乱したことが有罪の証拠として挙げられたので、心を励まして勇気を出しているように見えた。法廷に入って来ると、あたりを見まわし、私たちの坐っているところをすばやく見つけた。私たちを見ると、涙で眼が曇ったらしかったが、すぐに気をとりなおした。しかし、その悲しげな、情のこもった顔つきが、この少女がまったく無罪だということを証明しているように見えた。
裁判が始まり、検事がジュスチーヌ[#「ジュスチーヌ」は底本では「ジュチーヌ」]告発の論告をしたあとで、数人の証人が呼ばれた。いろいろの奇妙な
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