事実が重なりあってジュスチーヌを不利にしていたが、私のように無罪の証拠をもっていない者なら、そのために誰でも、無罪とすることに二の足を踏むにちがいない。ジュスチーヌは、殺人のおこなわれた夜は、ずっと家に居らず、夜明けごろ、殺された子どもの死体があとで見つかった地点から遠くない所に居るのを、市場の女に見つかっている。その女が、そこで何をしているのかと尋ねたが、ジュスチーヌの様子はすこぶるへんで、どぎまぎしたわけのわからぬ答えを返しただけであった。八時ごろに家に戻り、昨夜どこで過ごしたかと訊かれると、坊ちゃんを捜しに行ったと答え、とてもしんけんな顔をしてウィリアムのことを聞きたがった。死体を見ると、猛烈なヒステリーの発作を起し、数日間も床に就いてしまった。それから、ポケットに入っているのを女中が見つけ出したという画像が提出され、ジュスチーヌが、吃り声で、それは、坊ちゃんが居ないのに気がつく一時間前に、その頸に自分が懸けてあげたものと同じものだ、ということを証言すると、恐怖と憤慨のつぶやきが法廷にひろがった。
ジュスチーヌは抗弁を求められた。裁判が進行するにつれて、その顔色が変った。驚き、
前へ
次へ
全393ページ中128ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宍戸 儀一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング