ーヌの身のあかりの立つような手段を、何か見つけてくださるわね。私たちの不しあわせが、私たちには二重につらいのよ。あの愛らしい坊やをなくしたばかりでなく、私の心から好きなあのきのどくな少女が、いっそう悪い運命の手でもぎとられてしまうのですもの。もし、あの人が罪を宣告されたら、私はもう喜びというものを知らなくなるでしょう。だけど、そんなことはないわ。そしたらあたしは、小さなウィリアムの悲しい死のあとですけど、また幸福になるでしょう。」
「無罪だよ、エリザベート、」と私は言った、「それは証明されるよ。何も心配しないで、無罪放免を確信して元気を出すことだね。」
「あなたはなんて親切で寛大な方でしょう! ほかの人はみな、有罪だと思いこんでいますのよ。そんなことがあるはずもないのを知っていますから、私、なさけないわ。みんながそういう致命的な態度で偏見を抱いているのを見ると、私は望みを失って絶望的になってしまいますの。」そう言ってエリザベートは泣いた。
「エリザベートや、」と父が口を出した、「涙をお拭き。おまえが信じているように無罪だとしたら、この国の法律の正しさと、露ほども不公平の影がないようにしたいとおもっているこのわたしの運動に信頼しなさい。」
8 罪なき者の処刑
裁判が始まる十一時まで、私たちは悲しい時間を過ごした。父をはじめ家族がみな証人として出席しなければならないので、私もそれについて裁判所へ行った。この裁判のいまいましい猿まねのあいだ、私はなまなましい苦悩を感じた。それは、私の好奇心やとんでもない発明の結果が、親しい人たちを二人まで死なせるかどうかを決定することであった。その一人は、死ぬ前は歓びと無邪気に溢れてにこにこ笑っていたが、もう一人は、聞くも怖ろしい人殺しということでますます汚名が高まったために、ずっとずっと恐ろしく傷つけられている。ジュスチーヌは感心な娘で、幸福な生涯を送れるみこみのある性質をもっていたのに、今やすべてが不名誉な死によって抹殺されようとしているのだ、この私のために! ジュスチーヌがぬれぎぬをきせられている罪は、私が犯したのだと、いっそのこと白状しようかと何度おもったかわからないが、その犯罪がおこなわれた時にはここに居なかったので、そう主張したところで、狂人のたわごとと考えられるにきまっているし、私のために災難を受けたジュ
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