たときは、銀行勘定の借方に記入する代りに、現金勘定の借方に記入する。利子に相当する割引料は、もちろん、営業費勘定の借方に記入される。
五、私は、また一般に、現金で買入れをしないで、掛で買入れをする。そして、X、Y、Z等から掛で買入れるときは、商品勘定の借方に記入し、現金勘定の貸方に記入する代りに、商品勘定の借方に記入し、かつX、Y、Z勘定の貸方に記入をする。故に正常状態においては、私はある数の仕入先勘定貸方をもつ。
六、ここでもまた、私は一般に、X、Y、Zに対し現金で支払をしないで一定期間の信用を受けた後、私が振出す約束手形または彼らが振出し私が引受ける為替手形で支払をする。そしてこれらの手形を与えれば、私はX、Y、Z勘定の借方と現金勘定の貸方に記入をしないで、X、Y、Z勘定の借方と支払手形勘定の貸方に記入をする。これらの手形を支払ったときは、支払手形勘定の借方と現金勘定の貸方に記入をする。故に正常状態においては、私は支払手形勘定の貸方をももつ。
七、最後に、貸借対照表を作成するとき、倉庫に商品・原料・生産物が残存していないことはほとんどあり得ない。もしそれがあり得るとしたら、それは、各営業期間の終りにおいてすべての活動が中絶したことを意味する。この中絶は憂うべきことであり、不必要なことである。ところでこれと反対に実際には、私は家具を販売すれば、それに引続いて材木その他の原料を購うのである。棚卸をするのは、これらの商品についてである。私は常に営業費を商品勘定の借方に移す。しかし商品勘定の差引残高を求める代りに、棚卸された商品の正確な額だけが借方に残るように損益勘定によってバランスするのである。その理由は次の如くである。Md[#「d」は下付き小文字], Mc[#「c」は下付き小文字] はそれぞれ商品勘定の借方と貸方であり、Fは営業費の借方残高であり、Iは棚卸の額であるとすれば、利益がある場合には、商品勘定の借方 Md[#「d」は下付き小文字]+F にPを加えて、
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(Md[#「d」は下付き小文字]+F+P)−Mc[#「c」は下付き小文字]=I
[#ここで字下げ終わり]
とならねばならぬ。商品勘定は借方にIを残し、損益勘定はPを貸方に残す。損失の場合には、商品勘定の貸方 Mc[#「c」は下付き小文字] に金額Pを加えて、
[#ここから4字下げ]
(Md[#「d」は下付き小文字]+F)−(Mc[#「c」は下付き小文字]+P)=I
[#ここで字下げ終わり]
とならねばならぬ。商品勘定は、この場合にも、借方にIを残し、損益勘定はPを借方に残す。ところで右の二つのPの額は、ただ一つの方程式、
[#ここから4字下げ]
Md[#「d」は下付き小文字]+F−I±P=Mc[#「c」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
によって与えられる。この方程式は、次のような考察から直接に導き出すことも出来る。すなわち、買入れた原料の金額に、支払われた営業費を加え、これから使用せられなかった原料と在庫商品とを控除し、利益があればその額を加え、損失があればその額を控除すれば、差引残高は販売金額に等しい。
以上のようにして、資産を構成するものとして、現金及び固定資本または建設費の項目に、得意先勘定、受取手形、銀行勘定、棚卸商品が加わり、負債を構成するものとしては、資本主、損益の項目に仕入先勘定、支払手形等が加わる。これらを附け加えて、工業企業の普通の貸借対照表が得られる。農業・商業・金融業の貸借対照表もこれに類似したものである。
一九九 企業者が、いかにして貸借対照表によって、いつでも損益の状態を、原理上知り得るかは、右の説明によって明らかになった。以上で、私の定義は理論的にも実際的にも確立せられたのであるが、今は企業者が利益も得ず、損失も蒙らないものと想像し、また既にいったように(第一七九節)、原料・新資本・新収入・金庫にある流通貨幣の形態をとった企業者の流動資金及び収入の貯蔵・流通貨幣並びに貯蓄貨幣の形態をとった消費者の流動資金を捨象し、生産物と生産用役の市場価格が、均衡状態において、いかにして数学的に決定せられるかを示そうと思う。
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第二十章 生産方程式
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要目 二〇〇 商品と用役の利用、所有量。二〇一 用役の供給量と生産物の需要量との等価の方程式。極大満足の方程式。用役の部分的供給と生産物の部分的需要の方程式。二〇二 (1) 用役の総供給の方程式。(2) 生産物の総需要の方程式。二〇三 製造係数。(3) 用役の供給と需要の均等の方程式。(4) 生産物の売価と原価の均等の方程式。二〇四 製造係数の固定性。二〇五 原料。二〇六 2m+2n−1 個の未知数に対する同数の方程式。
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