・生産物等の残余が存在しないと仮定する。従って私は商品をもっていないわけであるが、商品勘定に残高がある。商品勘定は、現金勘定に対して二、〇〇〇フランを負い、またこれに対し六、〇〇〇フランを貸している。差額は四〇〇〇フランである。これは、どこから来ているのか。事ははなはだ簡単である。買った金額より高く売ったからである。実際、私がなさねばならなかったのは、このように高く売ることであった。私は、材木、その他の材料を購い、製品である家具什器を売った。ところで製品の価格のうちに、単に原料品の価格のみでなく、労働の賃銀を初めとし、他の一般的費用及びある額の利益が含まれていなければならぬ。四、〇〇〇フランの残高は三、〇〇〇フランの営業費を償い、一、〇〇〇フランの利益を残す。それが、私がまず第一に営業費を商品勘定の借方に移し、第二に商品勘定の残高を損益勘定の借方に移そうとする理由である。倉庫には商品が残存していないから、この商品勘定は締切らねばならぬ。この場合損益勘定では一、〇〇〇フランの貸方となって現われる。もし損失が現われれば、損益勘定の借方に数字が現われる。
一九七 以上の一切が終ったとき、私の勘定は次のようにして決算せられる。
現金勘定は一六、〇〇〇フランを受け、一〇、〇〇〇フランを支出している。よって六、〇〇〇フランの借方残高がある。
資本主勘定は、一〇、〇〇〇フランの払込みがあったのであるから、一〇、〇〇〇フランの貸方残高がある。
固定資本勘定は五、〇〇〇フランを受け入れている。よって五、〇〇〇フランの借方残高がある。
商品勘定は六、〇〇〇フランを受け、六、〇〇〇フランを支出している。故に差引残高がない。
営業費勘定は三、〇〇〇フランを受け、三、〇〇〇フランを支出している。故にここにも差引残高がない。
損益勘定は一、〇〇〇フランを支出している。よって一、〇〇〇フランの貸方残高がある。
要するに私の貸借対照表は次の如くである。
[#ここから横組み]
[#ここから7字下げ]
資産(借方勘定の一切から成る)
現金勘定 6,000
固定資本勘定 5,000[#「 5,000」に傍線]
計 11,000[#「11,000」に二重傍線]
負債(貸方勘定の一切から成る)
資本主勘定 10,000
損益勘定 1,000[#「 1,000」に傍線]
計 11,000[#「11,000」に二重傍線]
[#ここで字下げ終わり]
[#ここで横組み終わり]
私は一、〇〇〇フランの利益を得た。そして私は、第二期の営業を開始するのに、一〇、〇〇〇フランの代りに、一一、〇〇〇フランをもってする。その内の五、〇〇〇フランは固定資本であって、六、〇〇〇フランは流動資本である。
一九八 私は出来るだけ簡単な例を示した。だが実際においては、ここに指摘しておかねばならぬ所の正常的で例外でない幾らかの複雑さがある。
一、記帳は総括的になされるのではなくして、常に詳細に行われる。またそれは一回に行われるのではなくして、幾回にも亙ってなされる。すなわち固定資本として五、〇〇〇フランを支払い、原料の買入れに二、〇〇〇フランを支払い、営業費として三、〇〇〇フランを支払ったそのたびに、また商品を六、〇〇〇フランに売ったたびごとに、記帳をする。
二、私は一般に現金で販売しないで、掛で販売する。掛で得意先L、M、Nに販売したときは、商品勘定の貸方と現金の借方に記入しないで、商品勘定の貸方とL、M、N勘定の借方に記入し、彼らが支払いをなすときは、L、M、N勘定の貸方と現金勘定の借方に記入をする。故に正常の状態においては、ある数の得意先勘定借方が現われる。
三、そればかりではない。得意先L、M、Nは一定期間の信用を受けた後、現金でこれを決済しないで、私に宛てた約束手形、または彼らに宛て彼らが引受けた為替手形によって決済せられる。そして私がこれらの手形を受取ったときは、これをL、M、Nの貸方に記入しかつ現金勘定の借方に記入する代りに、L、M、Nの貸方に記入し、受取手形勘定の借方に記入をする。故に正常の状態においては、受取手形勘定の借方があるものである。この勘定は現金勘定に類し、借方と貸方との差は、私の金庫にある約束手形及び為替手形の合計に常に正確に一致する。
四、なおそれだけではない。一般に私は、私の商業手形を収受するのみでなく、これを銀行に譲渡して、期限前の割引を求める。かようにしてこれらの手形を流通するときは、受取手形勘定の貸方に記入しかつ現金勘定の借方に記入する代りに、私は受取手形勘定の貸方に記入しかつ銀行勘定の借方に記入する。銀行が現金で支払をなし
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