二〇七 実際上の解法。
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 二〇〇 捨象し得るものを捨象した後、問題の本質的な与件として残った最初の六項の用役(第一七八節)に立ち帰り、(T)、(T')、(T'') ……及び (P)、(P')、(P'') ……並びに (K)、(K')、(K'') ……をそれぞれ一定の期間中に得られる土地用役・労働及び利殖とする。そしてこれらの用役の量は、(一)自然的または人為的単位例えば土地のヘクタール・人の一人・資本の一単位など、(二)時間的単位例えば一日など、の二つの単位によって秤量せられるものと仮定する。故にそれぞれの土地の一ヘクタールの地用のある日数の量、それぞれの人の労働のある日数の量、それぞれの資本の利殖のある日数の量があるわけである。これらの用役の種類の数をnとする。
 右に定義せられた用役によって、我々は、同じ期間中に消費せられる(A)、(B)、(C)、(D)……の生産物を製造することが出来る。この製造はあるいは直接になされ、あるいは原料と称せられて既に存在する生産物を仲介として行われる。換言すれば、この製造は、あるいは地用・労働・利殖の結合により、あるいは地用・労働・利殖を原料に適用することによって行われる。だがこの第二の場合が第一の場合に還元せしめられることは後に述べる如くである。かくして製造せられた生産物の種類の数をmとする。
 二〇一 生産物は、各個人に対し私が既に r=φ(q) の形をとる利用方程式または欲望方程式で表わした利用をもつ(第七五節)。けれども用役それ自身もまた、各個人に対し、直接的利用をもつ。そして我々は随意に土地・人的能力・資本の用役の全部または一部を賃貸することも出来れば、自分のために保留しておくことも出来るのみでなく、また、地用・労働・利殖を、生産物に変形する企業者の資格においてではなく、直接に消費する消費者の資格において獲得することも出来る。換言すれば、地用・労働・利殖を、生産用役としてではなく、消費用役として得ることが出来る。私は先に第四・五・六項目の下に分類せられた用役を並べて、第一・二・三項目の下に分類せられた用役を一つの範疇に入れて、これを認めた(第一七八節)。故に用役もまた商品であって、各個人に対するその利用は r=φ(q) の形態をとる利用曲線または欲望曲線によって表わされ得る。
 これだけを前提として、ある人が(T)の qt[#「t」は下付き小文字] を、(P)の qp[#「p」は下付き小文字] を、(K)の qk[#「k」は下付き小文字] を処分するとする。r=φt[#「t」は下付き小文字](q), r=φp[#「p」は下付き小文字](q), r=φk[#「k」は下付き小文字](q) ……をそれぞれ用役(T)、(P)、(K)……がこの個人に対して一定時間中にもつ利用または欲望曲線であるとし、r=φa[#「a」は下付き小文字](q), r=φb[#「b」は下付き小文字](q), r=φc[#「c」は下付き小文字](q), r=φd[#「d」は下付き小文字](q) ……をそれぞれ生産物(A)、(B)、(C)、(D)……がこの同じ人に対して一定時間中にもつ利用または欲望曲線であるとする。また pt[#「t」は下付き小文字], pp[#「p」は下付き小文字], pk[#「k」は下付き小文字] ……を(A)で表わした用役の市場価格であるとし、pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……を生産物の市場価格とする。ot[#「t」は下付き小文字], op[#「p」は下付き小文字], ok[#「k」は下付き小文字] ……をこれらの価格において有効に供給せられた用役の量とする。これらの量は正であり得、この場合にはこれらの量は供給せられた量を示す。またそれらは負であり得、その場合には需要せられる量を示す。最後に da[#「a」は下付き小文字], db[#「b」は下付き小文字], dc[#「c」は下付き小文字], dd[#「d」は下付き小文字] ……を均衡価格において有効に需要せられる生産物の量とする。現に存在する狭義の資本の償却及び保険と新しい狭義の資本の創造を目的とする貯蓄とは、これを次の編に述べることとして捨象すれば、これらの諸量とそれらの価格との間に、方程式
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ot[#「t」は下付き小文字]pt[#「t」は下付き小文字]+op[#「p」は下付き小文字]pp[#「p」は下付き小文字]+ok[#「k」は下付き小文字]pk[#「k」は下付き小文字]+ …… =da[#「a」は下付き小文字]+db[#「b」は下付き小文字]pb[#「b」は下付き小文字]+dc[#「c」は下付き小文字]pc[#「c」は下付き
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