es)とも呼ばれる。
一七一 第二の範疇には人を属せしめる。旅行や享楽のほか何ものもしない人、他の人々のために用役をなす人、馭者《ぎょしゃ》、料理人、下男下女、国家の用役をなす官吏、例えば行政官・裁判官・軍人など、農業・工業・商業に従事する労働者、弁護士、医師、芸術家、自由職業に従事する者などは、皆この範疇に属し、資本である。今日遊楽に耽る閑人は、明日も遊楽に耽るであろう。一日の業をおえた鍛冶屋は、なお幾日もその仕事を続けるであろう。弁護をおえた弁護士は幾度か弁護を繰り返すであろう。かようにして人々は、最初の用役をなした後もなお持続するものであり、彼らがなす一連の用役は彼らの収入を構成する。閑人がなした享楽、職人がなした仕事、弁護士がなした弁護は、これらの人々の収入である。故に第二種類の資本として、人的資本[#「人的資本」に傍点](capitaux personnels)または人[#「人」に傍点](personnes)がある。この人的資本が生ずる収入は、人的収入[#「人的収入」に傍点](revenus personnels)または人的用役[#「人的用役」に傍点](services personnels)と呼ばれ、また労働[#「労働」に傍点](travaux)とも呼ばれる。
一七二 第三の範疇には、土地または人でなくして資本である他のすべての富を属せしめる。都鄙《とひ》到る所の住宅、公共の建築物、生産設備、工場、倉庫、あらゆる種類の建設物(いうまでもなく、それを支える土地を含ませない)、あらゆる種類の樹木草本、家畜、家具、衣服、書画、彫刻、諸車、宝石、機械、道具等がこれである。これらの物は収入ではなくして、収入を生ずる資本である。私共を居住せしむる家屋はなお永く私共を居住せしめるであろう。私の書画、宝石は常に私の手中にある。今日近隣の都市から旅客貨物を運送した機関車、客車、貨車は、明日もまた同じ線路上に旅客と貨物とを運送するであろう。ところで家屋が提供する居住、書画宝石から得られる装飾、列車によってなされる運送は、これら資本の収入である。故に第三種の資本として動産資本[#「動産資本」に傍点](capitaux mobiliers)または狭義の資本[#「狭義の資本」に傍点]があり、それらの資本が与える収入は動産収入[#「動産収入」に傍点](revenus mobiliers)または動産用役[#「動産用役」に傍点](services mobiliers)と称せられ、また利殖[#「利殖」に傍点](profits)とも呼ばれる。
一七三 一切の資本はこれら三つの範疇によって尽されているから、社会的富の第四の範疇に属するものとしては、収入しかない。小麦、麦粉、パン、肉類、葡萄酒、ビール、野菜、果実、消費者の用に供する加熱用・灯用の燃料等の消費目的物、再び肥料、種子、原料となる金属、木材、加工せられる繊維、布、生産の用に供せられる加熱用・灯用の燃料、その他生産物となって現われるために原料としては消失すべきすべての物すなわち原料品がこれである。
一七四 かくて明らかなように、土地、人、狭義の資本は資本である。土地の用役すなわち地用、人の用役すなわち労働、狭義の資本の用役すなわち利殖は収入である。故に正確で精密であるためには、生産要素として、三種の資本と三種の用役、すなわち土地資本、人的資本、動産資本と、土地用役、人的用役、動産用役、更に換言すれば土地と地用、人と労働、資本と利殖を認めなければならぬ。かように修正すれば、通常の用語は、事物の性質に基礎を有するものとして、許容することが出来る。
土地は自然的[#「自然的」に傍点]資本であって、人為的資本でもなく、また生産せられた資本でもない。また土地は消費し尽されない資本であって、使用により事変により消滅しないものである。だが岩石の上に土を運び、または排水灌漑等により人為的に生産せられた土地資本がある。また地震により河水の氾濫により滅失する土地資本もある。しかしこれらは少数であって、従って少数の例外を除けば、土地資本は消費し尽すことも出来ねば、生産することも出来ない資本であると考えてよい。これら二つの事情は各々その重要性をもつものではあるが、しかしこれらの二つの事情の同時的な存在が、土地資本にその特有な性質を与えるのである。すなわちこれによって、土地の量は厳密に一定不変ではないにしても、少くとも変化の少いものとなり、従って土地のこの量は原始的社会においては、すこぶる豊富であり、進歩した社会においては、人及び狭義の資本の量に比較してはなはだ限られたものとなる。その結果、事実において見るように、土地は、原始社会においては、稀少性も価値もゼロであり、進歩した社会においては、高い稀少性と価値とを
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