、これらを資本と交換せねばならない。
 資本は貯蔵[#「貯蔵」に傍点](approvisionnement)と混同してはならない。貯蔵は消費の目的にあらかじめ用意せられた収入の合計に過ぎない。穴倉に貯えられた葡萄酒、倉庫に貯えられた薪炭、織物の原料の如きは貯蔵である。鉱山・石山の鉱物・石材もまた収入の合計であって、資本ではない。
 一六八 私は、稀少である、すなわち利用があってかつ量において限られた有形または無形の物の総体を社会的富と名づけたのであるから(第二十一節)、この社会的富を二つに分類した資本と収入も、あるいは有形であり、あるいは無形のものである。物の有形無形は、資本と収入の場合にも、重要性をもたない。後に資本が何故《なにゆえ》に収入を生ずるかを述べるであろうが、そのときまた、有形の資本も無形の収入を生むことが出来、また無形の資本が有形の収入を生むことが出来るのを見るであろう。今からこの事実を述べておくのは、資本と収入との区別を明らかにしようと思うからである。
 一六九 資本の本質は収入を生ぜしめることにある。収入の本質は、資本から直接または間接に発生することにある。なぜなら資本は、定義により、人々が第一回の使用をなしてもなお残存するものであって、従って引続いて使用せられ得るものであるが、これらの使用の継続は明らかに収入の連続であるからである。土地は年々収穫を発生せしめる。家屋は春夏秋冬不順な気候を防いでくれる。土地のこの豊度、家屋のこの掩護《えんご》は、これら土地及び家屋の年々の収入を形成する。労働者は日々工場に労働し、弁護士・医師は日々その診療に従事する。この労働、この診療は、これら労働者の日々の収入である。同様に、機械・道具・家具・衣服の収入もある。多くの学者は、資本と収入とをかく区別して考え得なかったために、不明瞭と混同に陥っている。
 資本と収入との区別を明らかにするため、資本の使用によって成立する収入に、用役[#「用役」に傍点](services)の名を与えよう。この用役のうちには、公私の消費によって消費せられるものがある。家屋がなしてくれる掩護、弁護士の相談、医師の診察、家具衣服の使用などがそれである。これらを消費的用役[#「消費的用役」に傍点](services consommable)と呼ぶ。このほかに農業・工業・商業によって、収入または資本すなわち生産物に変化せられる用役がある。例えば土地の沃度、労働者の労働、機械道具等の使用などがこれである。それらは生産的用役[#「生産的用役」に傍点](services producteurs)と呼ばれる。後に私は流通の理論において、収入の貯蔵は独特の使用的用役[#「使用的用役」に傍点](service d'usage)を与えるのであるが、同時にまた、消費的または生産的な貯蔵の用役[#「貯蔵の用役」に傍点](service d'approvisionnement)を与え得ることを証明するであろう。消費的用役と生産的用役とのこの区別は、多くの学者が不生産的[#「不生産的」に傍点]消費と生産的[#「生産的」に傍点]消費との間になす区別に等しい。ここで研究しようとするのは、特に、生産的用役の生産物への変形である。
 一七〇 資本と収入との右の定義に拠りながら、私共は、社会的富の全体を四つの主な範疇――その中の三つは資本であり、他の一つは収入である――に分つことが出来る。第一の範疇には土地を属せしめる。公私の庭園・公園とせられた土地、人畜の食料となる果実・蔬菜《そさい》・穀物・牧草等を成長せしめ、木材を成長せしめるすべての土地、住宅・公共の建築物・鉱山の建設物・工場・店舗等が建設せられる土地、道路・街路・運河・鉄路として用いられる土地などは、この範疇に属する。冬季中休止状態にある庭園も、公園も、夏にはまた緑色となって、再び花が開く。今年生産物を出す土地は、また翌年生産物を出す。今年家屋や工場を支えている土地は、翌年もまたこれを支えているであろう。昨年歩んだ道路、街路を、私共は明年も歩むであろう。第一回の使用をしても存続し、その使用の連続は収入を構成する。散策眺望から受ける愉快は、公園、庭園から得られる収入である。生産力は生産用の土地の収入である。建築物に与えられた位置は建築用地の収入である。交通の便益は街路道路の収入である。故に第一範疇に属する資本として土地資本[#「土地資本」に傍点](capitaux fonciers)または土地[#「土地」に傍点](terres)がある。その収入は土地収入[#「土地収入」に傍点](revenus fonciers)または土地用役[#「土地用役」に傍点](services fonciers)と呼ばれ、また地用[#「地用」に傍点](rent
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