窒奄 de revient)の科学的方式を得るであろう。かくして私共は、経済学の二大法則を発見したこととなる。ただこれらの二つの法則を価格決定の点から互に競合せしめ矛盾せしめることなく、生産物の価格決定を第一の法則を基礎として説明し、また生産財の価格の決定を第二の法則を基礎として説明することにより、私は、これら二つの法則にそれぞれの地位を与えようと思う。多くの経済学者が信じたように、また今でも人々が信ずることを躊躇しないであろうように、また私自身も完全にはこの考えから脱却していないように、正常的理想的状態においては、商品の価格は、その生産費に等しい。この状態すなわち交換と生産の均衡状態において、五フランに売られる一本の葡萄酒は、この生産のために、二フランの地代、二フランの賃銀、一フランの利子を要する。問題は、二フランの地代、二フランの賃銀、一フランの利子を支払ったから、葡萄酒一本が五フランに売られるものであるか、または葡萄酒一本が五フランに売られるから、二フランの地代、二フランの賃銀、一フランの利子を支払うのであるかということにある。一言でいえば、問題は一般にいわれるように、生産物の価格を定めるものは、生産財の価格であるか、または生産費の法則によって生産財の価格を決定するものは、既に述べたような需要供給の法則によって決定せられる生産物の価格ではないかということにある。今、研究しようとする問題は、この問題である。
一六六 生産の要素の数は三つである。これらを列挙するとき、学者はこれらのそれぞれを、土地[#「土地」に傍点]、労働[#「労働」に傍点]、資本[#「資本」に傍点]と呼ぶのが最も普通である。だがこれらの表現は充分に厳密なものではなく、合理的演繹の基礎とすることが出来ない。労働[#「労働」に傍点](travail)は人の能力の用役すなわち人的用役である。故に労働と並べて土地、資本を置くべきではなくして、地用[#「地用」に傍点](rente)すなわち土地の用役と、利殖[#「利殖」に傍点](profit)すなわち資本の用役とを置かねばならぬ。私はこれらの語を厳密な意味に用いようと欲するから、これらを注意して定義せねばならぬ。この目的から、私はまず、資本及び収入について、普通に与えられるよりは遥かに狭い定義を与え、以下それを用いたいと思う。
一六七 私の父が「富の理論」(〔The'orie de la richesse〕. 1849)においてなしたように、すべての耐久財、すべての種類の消費し尽されることの無い社会的富または長い間にしか消費し尽されない社会的富、人が第一回の使用をなしてもなお残存する所のすべての量において限られた利用、換言すれば一回以上役立つすべての量において限られた、例えば家屋、家具のようなものを、私は、固定資本[#「固定資本」に傍点](capital fixe)または資本一般[#「資本一般」に傍点](〔capital en ge'ne'ral〕)と呼ぶ。そしてすべての消耗財すなわち直ちに消費せられるすべての社会的富、一度用役を尽せば消滅する稀少なすべての物、換言すれば一回しか役立たない財、例えばパン・肉のようなものを、流動資本[#「流動資本」に傍点](capital circulant)または収入[#「収入」に傍点](revenu)と呼ぶ。これらの収入の中に含まれるものは、私的消費財のほか、農業及び工業によって用いられる原料品、例えば種子、織物原料等である。ここでいう富の持続とは、物理的持続ではなくして、経済的持続すなわち利用の持続である。織物の原料にあたる繊維は、物理的には織物のうちに持続している。しかしそれらは原料としては消滅して、再び同じ用途に用いられない。反対に建物、機械のようなものは資本であって、収入ではない。なお附け加えておくが、ある種の社会的富は当然資本であり、他の社会的富は収入であるとしても、またその用途により、または人々がそれに要求する用役の種類により、あるいは資本となり、あるいは収入となる多数の富がある。例えば果樹などがそれであって、果実が採取せられるとき、それらは資本であり、薪を作るためまたは加工するために伐採せられれば、収入である。また家畜などが、それであって、使役せられるときまたは卵、牛乳を採取せられるとき、資本であり、食用に供するため屠殺せられるとき、収入となる。ところですべての種類の社会的富は、その性質により、その用途により、一回以上用いられるか、またはただ一回しか用いられないかであり、従って資本であるか、あるいは収入であるかである。
人々が資本を消費するという場合には、これらの人々がまずその資本を収入と交換し、しかる後この収入を消費することを意味する。同様に収入を資本化するには
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