齊O一 以上に述べてきた所によって明らかなように、多数の商品があるときも、二商品しか存在しないときと同じく、市場価格または均衡価格の成立の必要にしてかつ充分な要素は、所有者が所有する商品の量と、交換者に対するこれらの商品の利用方程式または欲望の方程式とであって、これらの方程式は常に曲線に表わされ得る。そしてこれらの構成要素から、(一)部分的及び総需要または供給の方程式、(二)市場価格すなわち均衡価格が出てくる。ただ、一方最大満足の条件と、他方任意の二商品間の価格がただ一つであってかつ総需要と総供給とが相等しくなければならぬという条件との二条件に、価格の一般均衡の条件を附け加えねばならぬ。
 だから――自由競争によって支配される市場における多数の商品相互の間の交換は[#「自由競争によって支配される市場における多数の商品相互の間の交換は」に傍点]、これら商品の一種または多種またはすべての種類の所有者のすべてが欲望の最大満足を得ることの出来る行動である[#「これら商品の一種または多種またはすべての種類の所有者のすべてが欲望の最大満足を得ることの出来る行動である」に傍点]。ただしこの欲望の最大満足とは[#「ただしこの欲望の最大満足とは」に傍点]、任意の二商品が共通で同一なる比率で互に交換せられるのみでなく[#「任意の二商品が共通で同一なる比率で互に交換せられるのみでなく」に傍点]、またこれら二商品が他の任意の第三の商品と交換せられて[#「またこれら二商品が他の任意の第三の商品と交換せられて」に傍点]、これらの交換比率の比が最初の二商品間の交換比率に等しくなければならぬという条件の下における欲望の最大満足である[#「これらの交換比率の比が最初の二商品間の交換比率に等しくなければならぬという条件の下における欲望の最大満足である」に傍点]。
 一三二 もし価格を価値尺度財で表わして叫ぶとすると、一般均衡の条件はこの事実によって充される。換言すればこの一般均衡の条件が裁定の方法によって充されるわけである。今これらの行動の正確な結果を説明するのが便利であろう。
 交換者(1)を(A)の所有者とし、交換者(2)を(B)の所有者とし、交換者(3)を(C)の所有者とし、ra,1[#「a,1」は下付き小文字], rb,1[#「b,1」は下付き小文字], rc,1[#「c,1」は下付き小文字], rd,1[#「d,1」は下付き小文字] …… ra,2[#「a,2」は下付き小文字], rb,2[#「b,2」は下付き小文字], rc,2[#「c,2」は下付き小文字], rd,2[#「d,2」は下付き小文字], …… ra,3[#「a,3」は下付き小文字], rb,3[#「b,3」は下付き小文字], rc,3[#「c,3」は下付き小文字], rd,3[#「d,3」は下付き小文字], ……をこれら三交換者に対する商品(A)、(B)、(C)、(D)、……の稀少性とし、かつしばらくこれらの稀少性は価格の変化に応じて変化する稀少性であるとする。裁定が起り得ないとの仮定の下においては、最大満足の条件は次の如く表わされる。
[#ここから4字下げ]
[#式(fig45210_110.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
 次に裁定が可能であると仮定し、ただ三つの商品(A)、(B)、(C)と三人の交換者(1)、(2)、(3)のみを考えてみる。価格は互に逆数であるから、裁定前には次のような関係がある。
[#ここから4字下げ]
[#式(fig45210_111.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
裁定後、一般均衡状態においては次のような関係が現われる。
[#ここから4字下げ]
[#式(fig45210_112.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
 だから、三商品(A)、(B)、(C)及び三交換者(1)、(2)、(3)についての推論が、すべての商品とすべての交換者にも拡張し得ることを知れば、次のことがわかる。市場が一般均衡状態にあるときは[#「市場が一般均衡状態にあるときは」に傍点]、任意の二商品の稀少性の比は[#「任意の二商品の稀少性の比は」に傍点]、一方の商品で表わした他方の価格に等しいが[#「一方の商品で表わした他方の価格に等しいが」に傍点]、この比はこれら二商品のすべての所有者においても同一である[#「この比はこれら二商品のすべての所有者においても同一である」に傍点]。
 一三三 va[#「a」は下付き小文字], vb[#「b」は下付き小文字], vc[#「c」は下付き小文字], vd[#「d」は下付き小文字] ……を商品(A)、(B)、(C)、(D)……の交換価値とし、ra,1[#「a,1」は下付き小文字], rb,1[#「b,1」は下付き小文字], rc
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