上の価格を成立せしめれば、(A)の需要者すなわち(B)の供給者はあるであろうが、(B)の需要者すなわち(A)の供給者はないであろう。そしてまたもし(A)で表わした(B)の価格として[#式(fig45210_029.png)入る]以下の価格を作れば、すなわち(B)で表わした(A)の価格として Ap[#「p」は下付き小文字] より以上の価格を成立せしめれば、(B)の需要者すなわち(A)の供給者はあるであろうが、(A)の需要者すなわち(B)の供給者はないであろう。
 六五 次に、曲線の形状を注意して観察すれば、二曲線の間に多数の交点がある場合があり得ることが解る。まことにもし二商品(A)、(B)について、(B)をもってする(A)の需要が曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] を示し、(A)をもってする(B)の需要が曲線 Bd[#「d」は下付き小文字]'Bp[#「p」は下付き小文字]' を示すとすれば、この曲線 Bd[#「d」は下付き小文字]'Bp[#「p」は下付き小文字]' は曲線 NPQ と三つの点 B, B', B'' において交わるであろう。この場合には、(B)と交換せられる(A)の供給曲線 KLM は、曲線 K'L'M' となるのであって、これは三つの点 A, A', A'' において曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] に交わるであろう。A, A', A'' はそれぞれ B, B', B'' 点に対応する。この場合には二商品(A)、(B)の相互の交換の問題に三つの解があり得る。なぜなら曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字], Bd[#「d」は下付き小文字]'B'p[#「p」は下付き小文字] に包まれて互に逆数である底辺をもちかつ高さが互に他方の面積に等しい二つの矩形の三組があり得るからである。だがこれら三つの解は、いずれも同一の価値をもつものであろうか。
 六六 三つの組のうち、まず、点 A' と B' の組、及び点 A'' と点 B'' の組を検討すれば、それらは、ただ一つの解しかあり得ない場合における点A及びBの組と同様の状態にあることが解る(第六〇節)。曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] は A' 点すなわち二曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字],K'L'M'[#「'」は底本では下付き] の交点の右方であるかまたは左方であるかにより、曲線 K'L'M' より小であるかまたは大である。同様に曲線 B'd[#「d」は下付き小文字]B'p[#「p」は下付き小文字] は、B' 点すなわち二曲線 B'd[#「d」は下付き小文字]B'p[#「p」は下付き小文字] と NPQ とが交わる点の右方であるかまたは左方であるかにより、曲線 NPQ より小であるかまたは大である。また曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] は、 A'' 点の右方であるかまたは左方であるかにより曲線 K'L'M' より小であるかまたは大である。同様にまた曲線 B'd[#「d」は下付き小文字]B'p[#「p」は下付き小文字] は、B'' 点の右方であるかまたは左方であるかにより、曲線 NPQ[#「NPQ」は底本では「NRQ」] より小であるかまたは大である。
 これら二つの場合にあっては、均衡点の彼方において、商品の供給はその需要を超え、価格の下落すなわち均衡点への復帰を生ずる。また均衡点の此方において、商品の需要はその供給を超え、価格の騰貴すなわち均衡点への前進が生ずる。だからこの均衡を、私共は、垂直線上にある重心の上方に懸吊《けんちょう》点を有する物体が、垂線上から離れるとき、重力によって自ら均衡点に落ち付く所の均衡に、比べることが出来る。この均衡は安定均衡[#「安定均衡」に傍点](〔e'quilibre stable〕)である。
 六七 点 A, B は同様ではない。A点の右においては曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] は曲線 K'L'M' より大であり、左においては小である。同様にB点の右においては、曲線 B'd[#「d」は下付き小文字]B'p[#「p」は下付き小文字] は曲線 NPQ より大であり、左においてはより小である。だからこの場合には、均衡点の彼方《あちら》において、商品の需要はその供給より大であって、これは価格の騰貴を生ぜしめる。換言すれば、均衡点を離れしめる。そしてこの場合にもまた均衡点の此方《こちら》においては、商品の供給はその需要より大であり、これは価格の下落を生ぜしめる。すなわち均衡点を離れしめる。故にこの均衡は、支点が縦線上の重心より下にある物体の均衡に比すべきもので、もし重心が
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