ないならば、それらの価格においては、各交換者に最大の満足は生じない。各交換者に最大の満足が生ずるのは、各交換者が需要する商品の稀少性の自分が所有する商品の稀少性に対する比が、裁定によって得られる真の価格に等しいときである。しかしもし、交換者が多数の商品の所有者であり、裁定が発生しないことを欲し、価値尺度財として採択せられた第m番目の商品で表わした m−1 個の商品の価格 m−1 個を叫ぶとすれば、任意の二商品の中の一方で表わした他方の価格は、価値尺度財で表わした二商品のそれぞれの価格の比に等しくなければならないから、各交換者に対し最大満足が生ずるのは、価値尺度財以外の商品の各々の稀少性と、この価値尺度財の稀少性との比が、叫ばれたそれぞれの価格に等しいときであることは明らかである。
 一一八 そこで、交換者(1)は、(A)の qa,1[#「a,1」は下付き小文字] 量、(B)の qb,1[#「b,1」は下付き小文字] 量、(C)の qc,1[#「c,1」は下付き小文字] 量、(D)の qd,1[#「d,1」は下付き小文字] 量……の所有者であるとする。またこの交換者に対する、ある期間における商品(A)、(B)、(C)、(D)……の利用曲線すなわち欲望曲線は、それぞれ r=φa,1[#「a,1」は下付き小文字](q), r=φb,1[#「b,1」は下付き小文字](q), r=φc,1[#「c,1」は下付き小文字](q), r=φd,1[#「d,1」は下付き小文字](q) ……であるとする。(A)で表わした(B)、(C)、(D)……の価格は、それぞれ pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……であるとする。そして価格が pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……であるとき、この交換者(1)が自分で所有していた量 qa,1[#「a,1」は下付き小文字], qb,1[#「b,1」は下付き小文字], qc,1[#「c,1」は下付き小文字], qd,1[#「d,1」は下付き小文字] …に加える所の(A)、(B)、(C)、(D)……のそれぞれの量を、x1[#「1」は下付き小文字], y1[#「1」は下付き小文字], z1[#「1」は下付き小文字], w1[#「1」は下付き小文字] ……とする。この加えられた量は正である場合がある。そのときには、それらは需要量を示す。またそれらは負であり得るが、その場合には、供給量を示す。そしてこの交換者がある商品を需要するには、等価量の他の商品を供給せねばならないから、x1[#「1」は下付き小文字], y1[#「1」は下付き小文字], z1[#「1」は下付き小文字], w1[#「1」は下付き小文字] ……等の量のうちで、あるものが+であれば、他は−であること、またこれらの間に一般的に方程式
[#ここから4字下げ]
x1[#「1」は下付き小文字]+y1[#「1」は下付き小文字]pb[#「b」は下付き小文字]+z1[#「1」は下付き小文字]pc[#「c」は下付き小文字]+w1[#「1」は下付き小文字]pd[#「d」は下付き小文字]+ …=0
[#ここで字下げ終わり]
が成立することは、明らかである。
 また最大満足の状態が仮定せられているから、これらの量の間には、次の一組の方程式が明らかに存在する。
[#ここから4字下げ]
φb,1[#「b,1」は下付き小文字](qb,1[#「b,1」は下付き小文字]+y1[#「1」は下付き小文字])=pb[#「b」は下付き小文字]φa,1[#「a,1」は下付き小文字](qa,1[#「a,1」は下付き小文字]+x1[#「1」は下付き小文字])
    φc,1[#「c,1」は下付き小文字](qc,1[#「c,1」は下付き小文字]+z1[#「1」は下付き小文字])=pc[#「c」は下付き小文字]φa,1[#「a,1」は下付き小文字](qa,1[#「a,1」は下付き小文字]+x1[#「1」は下付き小文字])
φd,1[#「d,1」は下付き小文字](qd,1[#「d,1」は下付き小文字]+w1[#「1」は下付き小文字])=pd[#「d」は下付き小文字]φa,1[#「a,1」は下付き小文字](qa,1[#「a,1」は下付き小文字]+x1[#「1」は下付き小文字])
……………………………………
[#ここで字下げ終わり]
すなわち m−1 個の方程式があり、これらは、前式と合せて、m個の方程式の一組となる。これらの方程式の中で、未知数 x1[#「1」は下付き小文字], y1[#「1」は下付き小文字], z1[#「1」は下付き小文字], w1[#「1」は下付き小文字] ……の m−1 個を順次に消去し、第m番目の未知数を諸価格の函数として示す方程式だけを残すことが出来る。ところで、交換者(1)による(A)の需要または供給は、方程式
[#ここから4字下げ]
x1[#「1」は下付き小文字]=−(y1[#「1」は下付き小文字]pb[#「b」は下付き小文字]+z1[#「1」は下付き小文字]pc[#「c」は下付き小文字]+w1[#「1」は下付き小文字]pd[#「d」は下付き小文字] ……)
[#ここで字下げ終わり]
によって与えられ、また、右のようにして、この交換者によってなされる(B)、(C)、(D)……の需要または供給の次の如き方程式が得られる。
[#ここから4字下げ]
y1[#「1」は下付き小文字]=fb,1[#「b,1」は下付き小文字](pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……)
z1[#「1」は下付き小文字]=fc,1[#「c,1」は下付き小文字](pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……)
w1[#「1」は下付き小文字]=fd,1[#「d,1」は下付き小文字](pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……)
…………………………
[#ここで字下げ終わり]
 同様に交換者(2)、(3)……によってなされる(A)の需要または供給は、方程式
[#ここから4字下げ]
x2[#「2」は下付き小文字]=−(y2[#「2」は下付き小文字]pb[#「b」は下付き小文字]+z2[#「2」は下付き小文字]pc[#「c」は下付き小文字]+w2[#「2」は下付き小文字]pd[#「d」は下付き小文字] ……)
x3[#「3」は下付き小文字]=−(y3[#「3」は下付き小文字]pb[#「b」は下付き小文字]+z3[#「3」は下付き小文字]pc[#「c」は下付き小文字]+w3[#「3」は下付き小文字]pd[#「d」は下付き小文字] ……)
…………………………………
[#ここで字下げ終わり]
によって与えられ、また、これらの交換者によってなされる(B)、(C)、(D)……の需要または供給の次の方程式が得られる。
[#ここから4字下げ]
y2[#「2」は下付き小文字]=fb,2[#「b,2」は下付き小文字](pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……)
z2[#「2」は下付き小文字]=fc,2[#「c,2」は下付き小文字](pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……)
w2[#「2」は下付き小文字]=fd,2[#「d,2」は下付き小文字](pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……)
…………………………
y3[#「3」は下付き小文字]=fb,3[#「b,3」は下付き小文字](pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……)
z3[#「3」は下付き小文字]=fc,3[#「c,3」は下付き小文字](pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……)
w3[#「3」は下付き小文字]=fd,3[#「d,3」は下付き小文字](pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……)
…………………………
[#ここで字下げ終わり]
 このようにして、すべての交換者のせり上げへの傾向は、諸商品のこれらの人々の各々に対する利用と、これらの人々によって所有せられるこれら商品の量とから導き出される。それはとにかく、私共の研究を進行せしめるに先立って、ここにはなはだ重要な解説をしておかねばならぬことがある。
 一一九 価格 pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……[#「……」は底本では欠落]がある値をとるとき、y1[#「1」は下付き小文字] が負であることがあり得る。これは、交換者(1)が商品(B)を需要しないで、供給する場合である。また y1[#「1」は下付き小文字] が −qb,1[#「b,1」は下付き小文字] に等しいことさえもあり得る。これは、この交換者が商品(B)を残しておかない場合である。y1[#「1」は下付き小文字] のこの値を、最大満足の m−1 個の方程式の体系に入れると、これらの方程式は、
[#ここから4字下げ]
φb,1[#「b,1」は下付き小文字](0)=pb[#「b」は下付き小文字]φa,1[#「a,1」は下付き小文字](qa,1[#「a,1」は下付き小文字]+x1[#「1」は下付き小文字])
φc,1[#「c,1」は下付き小文字](qc,1[#「c,1」は下付き小文字]+z1[#「1」は下付き小文字])=pc[#「c」は下付き小文字]φa,1[#「a,1」は下付き小文字](qa,1[#「a,1」は下付き小文字]+x1[#「1」は下付き小文字])
φd,1[#「d,1」は下付き小文字](qd,1[#「d,1」は下付き小文字]+w1[#「1」は下付き小文字])=pd[#「d」は下付き小文字]φa,1[#「a,1」は下付き小文字](qa,1[#「a,1」は下付き小文字]+x1[#「1」は下付き小文字])
……………………………………
[#ここで字下げ終わり]
となる。そしてこれらの方程式及び方程式
[#ここから4字下げ]
x1[#「1」は下付き小文字]+y1[#「1」は下付き小文字]pb[#「b」は下付き小文字]+z1[#「1」は下付き小文字]pc[#「c」は下付き小文字]+w1[#「1」は下付き小文字]pd[#「d」は下付き小文字]+ …… =qb,1[#「b,1」は下付き小文字]pb[#「b」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
から、pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] …を消去すれば、方程式
[#ここから4字下げ]
x1[#「1」は下付き小文字]φa,1[#「a,1」は下付き小文字](qa,1[#「a,1」は下付き小文字]+x1[#「1」は下付き小文字])+z1[#「1」は下付き小文字]φc,1[#「c,1」は下付き小文字](qc,1[#「c,1」は下付き小文字]+z1[#「1」は下付き小文字])+w1[#「1」は下付き小文字]φd,1[#「d,1」は下付き小文字](qd,1[#「d,1」は下付き小文字]+w1[#「1」は下付き小文字])+ …… =qb,1[#「b,1」は下付き小文字]φb,1[#「b,1」は下付き小文字](0)
[#ここで字下げ終わり]
が得られる。
 この方程式は、次の言葉に飜訳し得べき条件方程式である。――多数の商品の中の一商品の供給がこの商品の所有量に等しいためには[#「多数の商品の中の一
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