して何の役に立つか。空気は誰にも与えることが出来ないもので、また自ら呼吸する必要を感ずる場合には、口を開けばこれを得られるのであるから空気の貯蔵をしておく必要はない(通常の場合をいうのである)。これに反し限られた量しか存在しない利用のある物は、専有せられ得る物であり、専有せられる。まずそれらは、強制的に押しつけることも出来れば、差押えされることも出来る。ある数の個人のみが、この物の存在する量を集めて、共有の領域にこれを残しておかないようにすることが、たしかに可能である。そしてこの操作を行えば、これらの人々には二重の利益がある。第一に彼らはこれらの物の貯蔵を確保し、これらを利用して自らの欲望を充すに役立たせる可能性を準備しておく。第二にもし彼らがその貯蔵の一部しか消費しようと欲しないかまたは消費し得ないとしても、この過剰量と交換に、その代りとして消費すべきかつ量において限られた他の利用を獲得する能力を保留しておく。しかしこれはまた私共が別に取扱わねばならぬ所の異る事実となってくる。今ここでは専有(従って合法的なまたは正義に一致せる専有である所有権もまた)は社会的富にしか存在せず、またすべての社会的富に存在すると認めておくに止める。
 二四 (2)利用があって量において限られた物は、先に一言触れたように、価値がありかつ交換せられ得る。稀少な物が一度専有せられると(そして稀少なもののみが専有せられ、また専有せられる物はすべて稀少である)これらすべての物の間に一つの関係が成立する。この関係とは、これら稀少な物の各々は、それに固有な直接的利用とは独立に、特別な性質として、一定の比例で他の各々と交換せられる能力をもっているということである。もし人がこれら稀少な物の一つしかもっていないとすると、これを譲渡してこれと交換に、自らもっていない他の稀少な物を得ることが出来る。そして人がこの稀少な物をもっていないとすれば、自ら所有している稀少な他の物を与えることを条件としてしか、これと交換にこの稀少な物を得ることが出来ない。もしこの物をも所有せず、またこれと交換に与えるべき何ものも有《も》たないとすれば、このままで済ますほかはない。交換価値の事実とはこのようなものであり、所有権の事実と同じく、社会的富にしか存在せず、またすべての社会的富の上に存在する。
 二五 (3)利用があって量におい
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