んで無形の資本用役が存在することを認めないとすれば、科学的な価格決定理論を建設することは出来ない。反対にもし、右の区別と分類とを承認すれば、交換の理論によって消費目的物及び消費的用役の価格決定を、次に資本化の理論によって固定資本の価格の決定を、流通の理論によって流動資本の価格の決定を、することが出来る。その理由は次の如くである。
まず消費目的物と消費的用役とのみが売買せられる市場、換言すればそれらのもののみが交換せられる市場を想像し、かつそこでは用役の販売が資本の賃貸によって行われると想像する。これらのもののうちから価値尺度財として採択せられた物で表わしたこれらの物または用役の価格すなわち交換比率が偶然に叫ばれると、各交換者は、自らある一定期間の消費に比較的に過剰に所有していると信ずる物または用役を、これらの価格で供給し、自ら不充分であると信ずる物または用役を需要する。かくの如くにして各商品の有効に需要せられる量と供給せられる量は決定されるのであるが、需要が供給を超える物の価格は騰貴せしめられ、供給が需要を超える物の価格は下落せしめられる。このようにして叫ばれた新しい価格に対して、各交換者は新《あらた》な量を需要し、供給する。そして人々はなおも価格の騰貴または下落を生ぜしめ、それぞれの物または用役の需要と供給とが相等しくなったとき、これを停止する。そのとき価格は均衡市場価格となり、交換が現実に行われる。
次に交換の問題の中に、消費の目的物が生産的用役の相互の結合によって生ずる所のまたは生産的用役を原料に適用することによって生ずる所の生産物であるという事情を導き入れて、我々は生産の問題を提出する。この事情を考慮に入れるには、用役の売手であると同時に消費的用役及び消費の目的物の買手である地主、労働者、資本家の面前に、生産物の売手としてのまた生産的用役及び原料の買手としての企業者を置かねばならぬ。この企業者の目的は、生産的用役を生産物に変化して利益を得るにある。生産物は、彼ら企業者が相互に売買し合う原料であることもあれば、彼ら企業者に生産的用役を売った地主、労働者、資本家に販売せられる消費の目的物であることもある。だがこれらの現象をよく了解するためには、一つの市場の代りに、用役の市場([#「(」は底本では欠落]〔marche' des services〕)と生産物の市
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